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症状別コラム

2026年5月5日

野球肩(やきゅうかた)|投球で起こる肩の痛み・GIRDの原因とケア方法

「投げるたびに肩が痛い」「練習後に肩がだるく重い」——そんな悩みを抱えながらも、「少し休めばよくなるだろう」と我慢を続けている選手は少なくありません。野球肩は放置するほど深刻化しやすく、肩の構造が少しずつ変化してしまうことがあります。このコラムでは、野球肩がなぜ起きるのか、そして整骨院でできるケアと自宅での対処法をわかりやすく解説します。


⚾ 第1部:なぜ野球肩になるのか

野球肩とは

野球肩とは、投球動作の繰り返しによって肩関節とその周辺の組織が痛む状態の総称です。特にピッチャーや外野手など、強い投球を繰り返す選手に多く見られます。キーワードは次の3つです。

  • GIRD(肩内旋制限):肩を内側にひねる動きが硬くなる状態
  • 後方関節包拘縮:肩の後ろ側にある関節の袋が硬く縮む状態
  • 腱板疲労:肩を安定させる筋肉の腱に負担がたまる状態

発生のメカニズム

野球肩は「1回の大きなケガ」ではなく、繰り返しの微小なストレスが積み重なる慢性障害です。そのプロセスを順に追ってみましょう。

  1. フォロースルーで肩後方に繰り返しのストレスがかかる
    ボールをリリースした後、腕を減速させるフォロースルーの動作では、肩の後ろ側の組織が大きな引っ張り力を受けます。これが毎日の練習で何百回、何千回と繰り返されます。
  2. 後方関節包が硬くなり「GIRD(内旋制限)」が発生
    肩の後ろにある関節包(かんせつほう:関節を包む袋)が硬く縮むと、肩を内側にひねる動き(内旋)が制限されます。これがGIRD(Glenohumeral Internal Rotation Deficit)です。
  3. 肩甲上腕関節の動きが崩れ、腱板に過剰な負担がかかる
    GIRDがあると、投球中に上腕骨頭の位置が後上方にずれやすくなります。その結果、肩の深部にある腱板(けんばん:肩を安定させる筋肉の腱の集合体)に異常な力がかかり、断裂や炎症へと進展するリスクが高まります。
図1:正常な肩(左)とGIRD肩(右)の比較。GIRDでは上腕骨頭が後上方にずれ腱板にストレスがかかります。
図1:正常な肩(左)とGIRD肩(右)の比較。GIRDでは上腕骨頭が後上方にずれ、腱板にストレスがかかります。

なぜ休むだけでは改善しにくいのか

GIRDによる後方関節包の拘縮は、ただ練習を休んでも自然に柔らかくはなりません。硬くなった組織はストレッチや手技療法で積極的にほぐす必要があります。また、腱板の疲労や筋力の左右差を放置したまま復帰すると、再発・重症化のリスクが高まります。「痛みが引いたから大丈夫」という判断は危険です。


🧩 第2部:施術とセルフケア

整骨院での対応

いわさき整骨院では、後方関節包の硬さと腱板の状態を丁寧に評価した上で、以下のアプローチを組み合わせます。

  • ❶ 後方関節包へのアプローチ(手技療法)
    硬くなった後方関節包を徒手的にゆるめ、内旋の可動域を回復させます。痛みの少ない範囲から丁寧に行います。
  • ❷ 腱板の機能回復(運動療法)
    特に外旋筋(肩を外側に回す筋肉)の筋力が低下していることが多く、段階的なエクササイズで左右の筋力バランスを整えます。
  • ❸ 投球フォームの確認と指導
    後方へのストレスを減らすフォームへの修正や、ウォームアップ・クールダウンの見直しをアドバイスします。

自宅でできるセルフケア

以下の2種類のストレッチを、毎日の練習後(クールダウン時)に行いましょう。痛みが強い急性期は無理に行わず、整骨院にご相談ください。

Sleeper Stretch(スリーパーストレッチ)

横向きに寝て後方関節包を伸ばす代表的なストレッチです。GIRDの改善に有効とされています。

図2:スリーパーストレッチ(内旋)。左肩を下にして横向きになり、右手で左前腕を床方向へ押すストレッチ。
図2:スリーパーストレッチ(内旋)

外旋筋エクササイズ(チューブ・タオル使用)

ひじを体につけて90°に曲げ、軽い抵抗(チューブやタオル)を使いながら、前腕を外側に開く動作を10〜15回繰り返します。痛みのない範囲でゆっくり行うことが大切です。


復帰の目安と注意点

投球再開の目安は「GIRD(内旋の左右差)が15°以内」「投球側の外旋筋力が非投球側の90%以上」とされています。痛みがなくなっただけで判断するのではなく、機能的な左右差が解消されてから段階的に投球量を増やしていきましょう。

肩の痛みや違和感が続いている場合はご相談ください

早めの評価と対処が、競技復帰への近道です。いわさき整骨院では、肩の可動域・筋力・投球フォームを丁寧に確認し、選手一人ひとりに合ったケアプランをご提案します。

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参考文献

  1. Nishizawa et al. (2021). Relationship between glenohumeral internal rotation deficit and shoulder conditions in professional baseball pitchers. J Shoulder Elbow Surg.
  2. Kawakami et al. (2023). Are Rotator Muscle Performance and Posterior Shoulder Capsule Tightness Related to GIRD in Male College Baseball Players? JOSPT.
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