2026年5月5日
野球肘(内側側副靭帯損傷・離断性骨軟骨炎)の原因と施術
「投げるたびに肘の内側が痛い」「ボールをリリースする瞬間に鋭い痛みが走る」——野球肘は、投球動作の中で肘にかかる外反力(外側に曲げる力)が限界を超えたときに起こります。放置すると靱帯の断裂に至り、「トミー・ジョン手術」が必要になることもあります。早期発見・早期対処が重要です。
第1部:なぜ野球肘は起こるのか?
野球肘とは
野球肘とは投球動作を繰り返すことで肘に生じる障害の総称です。その中で最も多いのが内側側副靱帯(UCL:Ulnar Collateral Ligament)の損傷です。UCLは肘の内側を安定させる重要な靱帯で、繰り返しのストレスにより微細断裂が蓄積します。
投球時に肘にかかる外反モーメントは最大64Nm(ニュートンメートル)にも達し、これはUCLの最大耐久値に近いとされています。
投球フォームと外反ストレスの関係
- 加速期(ワインドアップ〜リリース):肘は急激に伸展する。内側のUCLに引っ張りストレス(牽引力)が集中
- フォロースルー:外側の骨同士(橈骨頭と上腕骨小頭)が圧迫される。外側型の離断性骨軟骨炎(OCD)の原因にも
- 繰り返し蓄積:1日100球以上・年間を通じた投げ込みでUCLの微細損傷が蓄積し、ある日突然の断裂を引き起こす
注意すべき症状
- 投球時の肘内側の痛み・違和感
- 肘を完全に伸ばしきれない(伸展制限)
- 物を握る・ひねる動作での痛み
- 肘内側を押すと強い圧痛がある
- 「ポキッ」という音や感覚(靱帯断裂の可能性)
第2部:施術とセルフケアの方法
施術の段階的アプローチ
- 急性期
投球を中断し安静。アイシング(15〜20分・1日3〜4回)で炎症を抑制 - 回復期
徒手療法で肘周囲の筋緊張を緩和。前腕屈筋群・円回内筋の柔軟性改善 - 強化期
UCLをサポートする筋群(前腕屈筋・肘屈筋)の強化エクササイズ - 復帰期
段階的投球プログラム(15m→30m→45m…と距離を伸ばす)
自宅でできるセルフケア
前腕屈筋群のエクササイズ
椅子に座り、前腕をテーブルに乗せて手首を上向きにする。軽いダンベル(500g〜1kg)や水入りペットボトルを持ち、手首を曲げ伸ばし。3秒かけて上げ、3秒かけて下げる。15回×3セット。
アイシングのポイント
投球後は必ずアイシングを行う。氷嚢かアイスパックをタオルに包み肘内側に15〜20分当てる。直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため必ずタオルを介すること。
保存療法 vs 手術
2023年の系統的レビュー(PMID: 36876746)では、保存療法(安静・理学療法・PRP注射)によって79.7%の選手が競技復帰できると報告されています。靱帯が完全断裂している場合や保存療法に反応しない場合にTommy John手術が検討されます。
野球肘でお悩みなら
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