2026年6月11日
肩関節前方脱臼の原因と施術・再発予防
「転倒したら腕が抜けてしまった」「スポーツで肩を強打したら肩が変な形になった」——肩関節前方脱臼は、全脱臼の約95%を占める最も多い脱臼です。一度脱臼すると再脱臼率が非常に高く(若年者では80%以上)、適切な施術と予防なしに繰り返す「反復性脱臼」に移行してしまいます。
第1部🔍 なぜ肩関節前方脱臼は起こるのか?
肩関節前方脱臼とは
肩関節は上腕骨の球(骨頭)と肩甲骨の受け皿(関節窩)からなります。この受け皿が非常に浅いため、肩は広い可動域を持つ反面、脱臼しやすい構造を持っています。前方脱臼では上腕骨頭が前方に飛び出し、関節唇(かんせつしん:関節窩の縁を深くする軟骨の輪)や靱帯が損傷します。
20〜30歳代のスポーツ選手と70歳以上のご高齢の方に多く、ケガのきっかけもそれぞれ異なります。
❶ 受傷の仕組み
- 外転・外旋位への強制:腕が横に広がった状態(外転)でさらに外側に回された(外旋)ときに前方構造に過大な牽引力が加わる
- Bankart損傷の発生:関節窩前下方の関節唇が剥がれ(バンカート損傷)、骨頭の前方安定性が失われる
- Hill-Sachs損傷の合併:上腕骨頭後外側が関節窩縁にぶつかり、骨頭に陥没骨折(ヒル・サックス損傷)が生じることがある

❷ 反復脱臼になりやすい理由
初回脱臼時に関節唇(バンカート損傷)が修復されないまま放置されると、骨頭を前方で支える構造が欠損したままになります。2022年のメタ分析(PMID: 35102053)では、25歳以下の初回脱臼後の再脱臼率は67〜80%と報告されており、若ければ若いほど再脱臼リスクが高いとされています。
第2部
💪 施術とリハビリ・再発予防
❶ 急性期の整復と固定
- 整復応急処置として徒手整復を行う場合があります。整復後は骨折や神経・血管損傷の有無を確認するため、整形外科でレントゲンなどの画像検査を受けてください
- 固定2022年のRCT(PMID: 35398165)では、外旋位固定(腕を外側に回した位置)が内旋位固定より再脱臼率を下げると報告。3〜4週間の固定が推奨
- 若年スポーツ選手再脱臼リスクが高く、関節鏡下Bankart修復術を早期に検討することがある
❷ リハビリ・自宅でできる再発予防エクササイズ
💪 外旋筋強化(チューブエクササイズ)
チューブやタオルを使い、肘を90度に曲げ体側に固定した状態で腕を外側に回す。インナーマッスル(棘下筋・小円筋)を鍛え、骨頭が前方へずれるのを防ぐ。15回×3セット、週3回。
💪 肩甲骨安定化エクササイズ
うつ伏せになり両腕をY字・T字・W字に広げてゆっくり持ち上げる(YTWエクササイズ)。肩甲骨周囲筋を強化して肩関節全体の安定性を高める。各10回×2セット。

・腕を外に広げた姿勢(外転・外旋位)での激しい接触プレーは慎重に
・肩のインナーマッスルと肩甲骨周囲筋の定期的なトレーニングを継続
・競技復帰前に整骨院・整形外科でリハビリ完了の確認を受ける
📚 参考文献
- Olds et al. (2022). Recurrence after first-time traumatic anterior shoulder dislocation: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. PMID: 35102053
- Whelan et al. (2022). External rotation immobilization vs. internal rotation immobilization for acute anterior shoulder dislocation: meta-analysis. J Shoulder Elbow Surg. PMID: 35398165
ご来院前に知っておくと安心


前の記事へ