「投げるたびに肩が痛い」「練習後に肩がだるく重い」——そんな悩みを抱えながらも、「少し休めばよくなるだろう」と我慢を続けている選手は少なくありません。野球肩は放置するほど深刻化しやすく、肩の構造が少しずつ変化してしまうことがあります。このコラムでは、野球肩がなぜ起きるのか、そして整骨院でできるケアと自宅での対処法をわかりやすく解説します。
⚾ 第1部:なぜ野球肩になるのか
野球肩とは
野球肩とは、投球動作の繰り返しによって肩関節とその周辺の組織が痛む状態の総称です。特にピッチャーや外野手など、強い投球を繰り返す選手に多く見られます。キーワードは次の3つです。
- GIRD(肩内旋制限):肩を内側にひねる動きが硬くなる状態
- 後方関節包拘縮:肩の後ろ側にある関節の袋が硬く縮む状態
- 腱板疲労:肩を安定させる筋肉の腱に負担がたまる状態
発生のメカニズム
野球肩は「1回の大きなケガ」ではなく、繰り返しの微小なストレスが積み重なる慢性障害です。肩の動きと、投球でかかる負担の関係を見ていきます。
- フォロースルーで肩後方に繰り返しのストレスがかかる
ボールをリリースした後、腕を減速させるフォロースルーの動作では、肩の後ろ側の組織が大きな引っ張り力を受けます。これが毎日の練習で何百回、何千回と繰り返されます。 - 後方関節包が硬くなり「GIRD(内旋制限)」が発生
肩の後ろにある関節包(かんせつほう:関節を包む袋)が硬く縮むと、肩を内側にひねる動き(内旋)が制限されます。これがGIRD(Glenohumeral Internal Rotation Deficit)です。 - 肩甲上腕関節の動きが崩れ、腱板に過剰な負担がかかる
GIRDがあると、投球中に上腕骨頭の位置が後上方にずれやすくなります。その結果、肩の深部にある腱板(けんばん:肩を安定させる筋肉の腱の集合体)に異常な力がかかり、断裂や炎症へと進展するリスクが高まります。

なぜ休むだけでは改善しにくいのか
GIRDによる後方関節包の拘縮は、ただ練習を休んでも自然に柔らかくはなりません。硬くなった組織はストレッチや手技療法で積極的にほぐす必要があります。また、腱板の疲労や筋力の左右差を放置したまま復帰すると、再発・重症化のリスクが高まります。「痛みが引いたから大丈夫」という判断は危険です。
🧩 第2部:施術とセルフケア
整骨院での対応
いわさき整骨院では、後方関節包の硬さと腱板の状態を丁寧に評価した上で、以下のアプローチを組み合わせます。
- ❶ 後方関節包へのアプローチ(手技療法)
硬くなった後方関節包を手技でゆるめ、内旋の可動域を回復させます。痛みの少ない範囲から丁寧に行います。 - ❷ 腱板の機能回復(運動療法)
特に外旋筋(肩を外側に回す筋肉)の筋力が低下していることが多く、段階的なエクササイズで左右の筋力バランスを整えます。 - ❸ 投球フォームの確認と指導
後方へのストレスを減らすフォームへの修正や、ウォームアップ・クールダウンの見直しをアドバイスします。
自宅でできるセルフケア
以下の2種類のストレッチを、毎日の練習後(クールダウン時)に行いましょう。痛みが強い急性期は無理に行わず、整骨院にご相談ください。
Sleeper Stretch(スリーパーストレッチ)
横向きに寝て後方関節包を伸ばす代表的なストレッチです。GIRDの改善に有効とされています。

外旋筋エクササイズ(チューブ・タオル使用)
ひじを体につけて90°に曲げ、軽い抵抗(チューブやタオル)を使いながら、前腕を外側に開く動作を10〜15回繰り返します。痛みのない範囲でゆっくり行うことが大切です。
復帰の目安と注意点
投球再開の目安は「GIRD(内旋の左右差)が15°以内」「投球側の外旋筋力が非投球側の90%以上」とされています。痛みがなくなっただけで判断するのではなく、機能的な左右差が解消されてから段階的に投球量を増やしていきましょう。
投球時以外にも、夜の痛みや腕の上げにくさがある方は、四十肩・五十肩の記事も参考にしてください。
肩の痛みや違和感が続いている場合はご相談ください
早めの評価と対処が、競技復帰への近道です。いわさき整骨院では、肩の可動域・筋力・投球フォームを丁寧に確認し、選手一人ひとりに合ったケアプランをご提案します。
参考文献
- Nishizawa et al. (2021). Relationship between glenohumeral internal rotation deficit and shoulder conditions in professional baseball pitchers. J Shoulder Elbow Surg.
- Kawakami et al. (2023). Are Rotator Muscle Performance and Posterior Shoulder Capsule Tightness Related to GIRD in Male College Baseball Players? JOSPT.
ご来院前に知っておくと安心
こんな症状があるときは、先に医療機関の受診を
次のような症状がある場合は、整骨院での施術より先に、整形外科などの医療機関の受診をおすすめします。
- 成長期のお子さんで、痛みが2週間以上続いている(骨や軟骨の障害が隠れていることがあります)
- 関節が引っかかる・急に動かなくなる、急に力が入らなくなる
- 安静にしていてもズキズキ痛む、夜間に痛みで目が覚める
- 腫れや熱っぽさが強い、見た目が変形している
- 手や指のしびれ、力の入りにくさがある
判断に迷うときは、来院前にお電話でご相談いただいても構いません。状態をうかがい、医療機関の受診が優先と考えられる場合はその旨をご案内します。
料金・健康保険について
野球肩・野球肘・テニス肘のように、スポーツで痛めたものも健康保険の対象になります。適用できるかどうかと費用は、痛めた原因や状態を確認したうえで、施術前にご説明します。
使えるかどうかは「いつ・何をして痛めたか」「痛めてからの期間」「病院で治療中かどうか」で決まります。具体例つきの判定のしかたは下の記事で説明しています。
記事の執筆・内容確認:岩崎 真太郎(柔道整復師)/当院について
最終更新日:2026年7月25日
▶ スポーツ・日常のケガ全体については スポーツ・日常のケガでお悩みの方へ|部位別の見分け方と対処法 でまとめて解説しています。

